山形の小さなゲストハウス「わたうさぎ」に、フランスからの旅人カップルがやってきました。名前はテオとレオニ。
ふたりは長期休暇を利用して日本中を旅していて、日本の文化と言葉に深く興味を持っていました。
滞在中、わたうさぎの施設内で行われている「わたうさイングリッシュ」に参加していただいた時のことです。
「わたうさイングリッシュ」とは、英語縛りのカードゲームをしながら、地域の人やゲストたちと交流を深めたり、英語や日本語や多言語の学びを深める会です。
そんなカードゲームナイトの一場面。
「あなたがいちばん好きな日本語は?」という話題に。
テオが答えたのは——「こもれび」
レオニは少し照れながら——「一期一会」
ここから始まった、一連のエピソードを今日はつづっていきます。
🌿テオが恋した言葉:「こもれび」
「こもれび(木漏れ日)」とは、木々の葉のあいだから、やわらかく地面に差しこむ陽の光のこと。
テオはその音の響きと、意味を聞いた瞬間、すぐに恋に落ちたそうです。
「この言葉、フランス語には一語で存在しないんだよ」
彼がそう語ったとき、わたしは「じゃあなんて言うの?」って思いました。フランス語で「こもれび」を表現すると、とってもながーい文章で説明するしかないんだそうです。
chatGPTにきいたところ、フランス語で「こもれび」を表そうとすると、こうなるようです。
“La lumière du soleil qui traverse les feuilles des arbres.”
「木々の葉を通り抜ける太陽の光」
もちろん、伝わるんだけど……長い!情緒が!足りない!(笑)
日本語ではたった一語で、その光と影、輝きと眩しさ、静けさまでを含めて表現できる。
テオは、外国人ながら、日本語の美しさを熱く語ってくれたのでした。
その通り。「こもれび」はただの自然描写ではなく、自然と調和して生きる感覚そのものを表す、日本語の芸術なのです。
外国人の彼が日本語の美しさや奥深さを感じ、興味を持ってくれているのがよくわかるエピソードでした。
🍙テオが戸惑った言葉:「いただきます」
テオが日本語を学ぶ中で、もっとも不思議に感じた言葉のひとつだったのが、この「いただきます」のようです。
彼が言うには、食事の前に発する言葉の意味が違うことに面白さを感じたようです。
まず、わたしたち日本人は食事をする前に、手を合わせて「いただきます」と唱えますよね。幼稚園の頃から、みんなで声をあわせて、あたりまえに言っていた記憶があります。
フランスでも、同じように食前に唱える言葉があるんだそう。
でも、このときに唱える言葉が、この日本とフランスで全く違うのだと言います。
日本の「いただきます」
日本語の「いただきます」は、自分の内側に向けてそっと唱える感謝の気持ちです。
命をくれた食材たちへ。
食材を育てている人たちへ。
料理を作ってくれた人へ。
食卓を整えてくれた人へ。
そして、今日という日と、この時間と、ここにいる自分自身へ。
あらゆる“いただいているもの”に感謝をこめて、ひと息つくように発するのが、「いただきます」なのです。
フランスの「いただきます」
フランス語では「Bon appétit(ボナペティ)」が、食事の前に交わされる言葉なのだそう。
これは「食事を楽しんでね」「良い食欲を」という意味で、相手に対する軽やかなあいさつなのだそう。
他者への気遣いや社交的なマナーの一環という認識が強く、食べる前に言うけど、「命への感謝」というより「場を和ませる」目的が強めなのだそうです。
ちなみに、フランス語で「さあ、食べよう!」とみんなに声をかけるなら「Mangeons!(マンジョン)」。
ただし、これもまた日本語の「いただきます」とはやはり意味合いが違うように感じます。
「いただきます」もフランス語にはない
フランスでは「Bon appétit(ボナペティ)」が食事前のあいさつとして定着していますが、これはあくまで“相手に向けた”軽やかなフレーズで、「おいしく召し上がれ」というニュアンスのようです。
“命をいただく”とか、“感謝を込める”という精神的な意味合いは含まれていません。
でも、本当にテオが言ったように、フランス語には「いただきます」と同じ意味を持つ言葉は存在しないのか?
これもまたCHATGPTに聞いてみました。
答えは「ない」そうです❣️
では、「いただきます」の背景にある感謝や祈りを、あえてフランス語で文章で表現するなら?
と、chatGPTにきいたところ・・・。
Je remercie les êtres vivants dont la vie me nourrit,
ainsi que toutes les personnes qui ont contribué à préparer ce repas.
C’est avec gratitude et respect que je commence à manger.
(命を与えてくれた生き物たちと、この食事を準備してくれたすべての人に感謝します。感謝と敬意をもって、これからいただきます。)
このような長文のお祈りのような文章になってしまうようです😆
それが、日本語ではたった一言、「いただきます」で表現できてしまうとは驚きですね❣️
ここでもまた、日本語の秀逸さを再確認できました🥰
まとめ
「こもれび」や「いただきます」のように、一見シンプルなのに、じつは深い意味をもつ日本語。
旅人テオとレオニの目を通して、あらためて気づかされたのは、わたしたちが日々ふれている言葉の中に、どれほどの美意識や価値観が宿っているかということでした。
たった一語で風景を描ける。
日本語とはとても奥深い言語です。
この奥深さまで理解できる外国人は多くない気がします。
日本人でもそうおおくないかもしれませんね。
言葉の違い、文化の違い、たくさんのことに気づくことができたわたうさイングリッシュでした🥰
これからもたくさんのゲストをお迎えして、いろんな国の言語や文化に触れていきたい❣️
今日の記事はここまで。