朝晩の冷え込みが一気に強まると、庄内の町のあちこちに“柿のれん”が現れます。
軒先につるされたオレンジ色の柿が、冬の光を透かしてゆらゆら。
あの光景を見ると、「いよいよ冬が来るなぁ」と感じます。
干し柿は、庄内の寒さとともに生まれた冬の知恵。
冷たく乾いた風が、ゆっくりと果実の水分を奪いながら、甘みを凝縮してくれる。
庄内の冬は厳しいけれど、その寒さこそが、あのやさしい甘さを生むのです。
干し柿のはじまりと、庄内に根付いた理由
干し柿の歴史は古く、平安時代にはすでに“柿を干して保存する”文化があったといわれています。
当時は寺院や貴族の保存食であり、寒さの厳しい地域ほど、貴重な甘味として大切にされました。
江戸時代になると、全国各地で柿の栽培が広まり、庄内のような冷涼で湿度の低い土地では、自然乾燥だけで上質な干し柿ができるようになりました。
出羽三山の参拝客へのおみやげや、年末の贈答品としても人気を集め、“庄内の冬の味”として定着していきます。
「冬に太陽を食べる」――
干し柿は、まさにそんな言葉が似合う庄内の風物詩。
昭和の頃までは、どの家の軒先にも“柿のれん”があり、家族総出で皮をむき、風に揺れる柿を見守るのが秋の終わりの風景でした。
干し柿・あんぽ柿・ドライフルーツの違い
今では「柿を干す」といっても、さまざまなスタイルがあります。
昔ながらの天日干し、現代的な低温乾燥の“あんぽ柿”、最近ではドライフルーツも人気です。
それぞれに個性と味わいがあるんです。
庄内の寒風がつくる干し柿は、甘さの中に“清らかな香り”が残るのが特徴。
乾燥しすぎず、ほどよく水分を抱いたまま仕上がる。
それが、庄内の冬の空気ならではの味わいです。
自家製ドライフルーツという楽しみ
さちこさんも数年前から、庄内柿をスライスして“自家製ドライフルーツ”を作るようになりました。
最初は興味本位で試したのですが、乾かすことで甘みと香りが凝縮し、紅茶やヨーグルトにとてもよく合うんです。
作り方は簡単。
柿を5mmほどの薄切りにして、風通しのいいところに干して2週間ほど乾かすだけ。
途中で裏返すとムラがなく仕上がります。
ポイントは、8割乾きで止めること。
完全にカラカラにせず、少し柔らかさを残すと、「干し芋」ののような食感が楽しめます。
紅茶に浮かべるとほんのり甘く香り、チーズやナッツと合わせると、ワインのおともにもなる。
グラノーラやスコーンに混ぜれば、自然な甘さのお菓子に変身します。
ただ……今年は寒くなるのが早すぎて、作るタイミングを逃してしまいました。
あっという間に秋が通り過ぎていった感じです。
でも、その“逃した季節”があるからこそ、また来年が楽しみになるんですよね。
さちこさんおすすめの楽しみ方
干し柿はお茶請けだけじゃなく、少し工夫するだけで、いろんな顔を見せてくれます。
① お茶請けに。
輪切りの干し柿を温かい煎茶やほうじ茶と一緒に。
渋みと甘みが調和して、心までほぐれる。
② チーズと合わせて。
カマンベールやブルーチーズの塩気と干し柿の甘さ。
ワインのおともに最高です。
③ 干し柿バタートースト。
スライスした干し柿をバターを塗ったトーストにのせて。
香ばしさと甘さのバランスが絶妙。
④ ヨーグルト+刻み干し柿。
失われたビタミンCを補うなら、
キウイやみかんと一緒に。爽やかさが増します。
⑤ お菓子づくりに。
細かく刻んでスコーンやパンケーキに混ぜると、
砂糖を減らしても自然な甘さに。
ひと手間で、“昔ながら”と“いまの暮らし”がつながるのがいいところ。
庄内の冬の味を、日々の食卓にも少し取り入れてみてください。
お客様が教えてくれたこと
先日、わたうさぎに泊まったお客様が教えてくれました。
「2週間でできる“干し切らない干し柿”が好きで、そのための柿を毎年買って帰るんですよ」と。
寒さと時間が作る甘みを、自分の暮らしの中で楽しむ人がいる――
その話を聞いて、なんだか嬉しくなりました。
今年は間に合わなかったけれど、「来年はわたしも作ってみよう」と思っています。
また次のシーズンが、今から楽しみです。
今日の記事はここまで。
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