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ゲストハウス【わたうさぎ】:山形県鶴岡市の民泊
やまがたいいとこ
【NO.21】羽黒山五重塔の謎――なぜ神社の境内に「仏塔」があるのか

【NO.21】羽黒山五重塔の謎――なぜ神社の境内に「仏塔」があるのか

目次

羽黒山の石段を10分ほど登ると、突然、森の中に五重塔が現れます。

東北最古の国宝。高さ約29m。室町時代に建てられた、杉並木に囲まれた美しい塔。

でもここで多くの人が立ち止まり、こんな疑問を感じます。

「神社の境内に、なぜ仏教の塔があるのか?」

この疑問は、日本の宗教史の核心に触れる、実はとても深い問いです。

今回は五重塔の「謎」——その存在の不思議と、なぜここに在り続けているのかを解き明かしていきます😊

→ 羽黒山の石段ガイドはこちら(記事No.12)

→ 神仏習合・廃仏毀釈についてはこちら(記事No.20)

まず基本データを押さえる

正式名称:羽黒山五重塔

所在地:羽黒山参道(随神門から石段を約10分登ったところ)

高さ:約29.0m

建立:現存する建物は室町時代(14〜15世紀)のものとされる

最初の建立:平安時代初期(9〜10世紀頃)という説が有力

文化財指定:国宝(日本で最も重要な文化財の最高位)

東北最古:東北地方に現存する最古の塔建築

謎①:なぜ神社の境内に仏塔があるのか

五重塔は仏教建築です。本来、寺院に建てられるものです。

しかし羽黒山は現在、「出羽三山神社」——れっきとした神道の神社です。

なぜ神社の境内に、仏教の塔があるのでしょうか?

答えは「神仏習合」の歴史にあります。

五重塔が建てられた平安ぜ室町時代の日本は、神道と仏教が深く融合した「神仏習合」の時代でした。羽黒山はこの時代、神道の聖地であると同時に仏教寺院・修験道の修行地でもある複合的な霊場でした。

神仏習合の世界では、神社の境内に仏塔が建てられることはまったく矛盾ではありませんでした。むしろ自然なことでした。

「なぜここに仏塔があるのか」という疑問は、じつは「なぜ今もここに残っているのか」という疑問と表裏一体なのです。

→ 神仏習合の歴史を詳しく知るにはこちら(記事No.20)

謎②:なぜ廃仏毀釈を生き延びたのか

1868年の明治維新後、日本では「廃仏毀釈」の嵐が吹き荒れました。

各地の神社境内から仏教的要素が撤去・破壊されていく中、羽黒山五重塔は取り壊しを免れました。

これが「謎②」です。

正確な経緯は文献によって諸説ありますが、以下のような要因が複合的に働いたとされています。

  • 塔の圧倒的な規模(高さ29m)と美しさが、取り壊しに踏み切るのを躊躇わせた
  • この塔の価値を理解した人々が保存を訴えた
  • 廃仏毀釈の実施状況が地域によって異なり、出羽三山では比較的穏当だった

いずれにせよ、この塔が今ここに立っていることは、ある種の奇跡です。

もし廃仏毀釈の嵐の中で取り壊されていたなら、東北最古の国宝は永遠に失われていたことになります。

謎③:五重塔はなぜ「五層」なのか

五重塔の「五」には意味があります。仏教では、宇宙を構成する5つの要素——「地・水・火・風・空」——を「五大(ごだい)」と呼びます。

層 五大 読み 象徴するもの
最下層(一重) 地 ち 固さ・基盤・物質世界
二重 水 すい 流動性・適応・生命を支える水
三重 火 か エネルギー・変容・熱と光
四重 風 ふう 動き・呼・目に見えない力
最上層(五重) 空 くう 空虚・未顕現・純粋な意識

五重塔の5層は、この五大を象徴しているとされています。つまり五重塔は「宇宙の縮図」であり、塔全体が「宇宙のすべて」を表しているのです。

ただし、この象徴的な意味は建築の外見からは直接見えません。知っているか知らないかで、五重塔の前に立ったときの感慨がまったく変わります。

謎④:五重塔の中には何があるのか

「五重塔の中には何があるのか?」——これもよく聞かれる質問です。

残念ながら、羽黒山の五重塔の内部は一般公開されていません。通常は外から見学するだけです。

ただし、一般的な五重塔の内部には「心柱(しんばしら)」と呼ばれる中心の柱が一本立っており、構造を支えています。仏舎利(仏陀の遺骨または遺物)が納められているとされるものもあります。

「内部に何があるかわからない」という神秘性も、五重塔の魅力のひとつかもしれません。

五重塔をどこから、どう見るか

五重塔は石段を歩く参拝者だけが「発見」できるスポットです。

石段を随神門から登っていくと、祓川の神橋を渡ってほどなく、杉並木の合間から突然、五重塔が現れます。この「発見の瞬間」こそが五重塔体験の核心です。

見学のポイントをいくつかご紹介します。

  • 少し引いた位置から5層すべてを見渡す——杉の幹をフレームにした「額縁構図」が定番
  • 近くに寄って軒の精巧な木組みを観察する——職人技の細部が素晴らしい
  • 光の当たり方によって表情が変わる——午前中の光が塔の正面に当たる時間帯がおすすめ
  • 雨の日・霧の日は上部が霞んで幻想的な「消えていく塔」の姿になる

時間は15〜20分かけてじっくり観察することをおすすめします。急いで通り過ぎるには惜しすぎる場所です😊

📍ゥ 羽黒山五重塔:随神門から石段約10分。見学自由(内部は非公開)。撮影OK。

→ フォトスポットとしての五重塔の撮り方はこちら(記事No.13)

→ 五重塔の建築史・詳細はこちら(記事No.23)

五重塔が教えてくれること

羽黒山の五重塔は、単に「古くて美しい仏塔」ではありません。

1,200年にわたって続いた神仏習合という時代の産物であり、廃仏毀釈という嵐を生き延びた「奇跡の生き残り」であり、日本の宗教史の複雑さをひとつの建物の中に体現した存在です。

「なぜここにあるのか」を知ってから五重塔の前に立つと、その存在の重みがまったく違って感じられます。

その答えは、幾層にも重なっています。美しさは一瞬で伝わり、歴史は深く沈んでいます。

杉並木の間から突然現れるこの塔——羽黒山が1,400年かけて積み重ねてきた歴史の全体が、一瞬でここに凝縮されています😊

まとめ

羽黒山の五重塔の「謎」は、日本の宗教史そのものへの入り口です。

  • なぜ神社に仏塔があるのか?→ 神仏習合の時代に建てられたから
  • なぜ廃仏毀釈を生き延びたのか?→ 様々な要因が重なった「奇跡の生き残り」
  • なぜ五層なのか?→ 仏教の「五大(地・水・火・風・空)」を象徴する宇宙の縮図

これらの謎を搴えて石段を登り、五重塔の前に立ってみてください。

見え方が変わるはずです😊

→ 神仏習合・廃仏毀釈の歴史はこちら(記事No.20)

→ 五重塔の建築・歴史の詳細はこちら(記事No.23)

→ 羽黒山の石段全解説はこちら(記事No.12)

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