「行ってきます」は、別れの挨拶ではないんです。
今回は、宿の玄関で毎日交わしている「行ってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「お帰りなさい」という4つの挨拶についてご紹介します。
わたうさぎには、海外からのお客さまがたくさんいらっしゃいます。これまでわたしは、なるべく英語で声をかけようと頑張ってきました。出かけるお客さまには「Have a nice day!」、戻ってきたお客さまには「Welcome back!」😊
でも最近、ちょっと考えが変わってきたんです。きっかけは、この4つの言葉にこめられた意味を知ったことでした。
「行ってきます」= 行く + 来る
実は「行ってきます」は、「行く」と「来る」がくっついた言葉なんです!「行って来る」の丁寧に宣言をする、それが「行ってきます」。
つまり「出かけて、そして戻って来ます」という意味。ただの別れの挨拶ではなくて、帰ってくることまで言葉の中に入っている・・・言われてみれば、たしかに!と納得ですよね。
でも、大事なのはここからなんです。「行く」と「来る」がくっついている、という文法の話だけではありません。
「無事に帰ってきますね」
「行ってきます」には、送り出す人を安心させるためのこんな気持ちが入っているのではないでしょうか?ただ出かける宣言ではなく、身近な人に対する小さな約束だったんです。
家族に言う「行ってくるね」も、友だちに言う「じゃ、行ってくる」も。日本人はふだん意識せずに、毎朝「ちゃんと今日も帰ってきます」、お別れのたびに「また会いましょう」と宣言しているんです。
そうかんがえると、とっても素敵な挨拶だと思いませんか?
「いってらっしゃい」= 行って、来てください
さらに、送り出す側の「いってらっしゃい」は、「行って」+「いらっしゃい」。
「いらっしゃる」は「行く・来る・いる」の尊敬語で、ここでは「来てください」の意味とされています。
「行って、来ます」/「行って、来てください」・・・出かける側と見送る側の挨拶が、見事な対句になっているんですね✨
もちろん「いってらっしゃい」にも、「行ってきます」と同じ気持ちが入っています。「気をつけてね」「無事に帰ってきてね」。ただ送り出しているのではなく、その一日の無事を願っている言葉なんです。
なんて素敵なんだろうか。改めて日本語の美しさを感じませんか?
ただし、ここが面白いところなんですが・・・
お店に入ったときの「いらっしゃいませ」も、実はおなじ「いらっしゃる」です。でも、「いらっしゃいませ」は「よくぞ来てくださいました」という意味。
つまり「いってらっしゃい」と「いらっしゃいませ」は、似て非なる言葉なんです!
日本語の難しさを感じますよね😆
「ただいま」= 只今、帰りました
帰ってきたときの「ただいま」は、「只今(ただいま)帰りました」の省略形です。「今この瞬間、戻りました」の、頭の部分だけが残った形なんですね。
これもまた、愛の溢れる言葉ではないかと思います。
「たったいま、無事に帰宅することができました。」
ただの挨拶ではなく、相手に、自分の無事を知らせるための言葉だったんです。私たち日本人はこの挨拶を率先して使うべきだし、外国の方にも覚えて帰って欲しいと思える、とても素敵な挨拶だと感じます。
「お帰りなさい」
迎える側の「お帰りなさい」は、「お帰りなさいました」の省略。「お+なさる」は尊敬語の形ですから、「よくぞお戻りになりました」と、帰ってきた事実を受け止める言葉になります。
もちろん、この「お帰りなさい」にも、「よくぞ無事にお帰りなさいました」という隠れた思いが込められています。
いまでこそ平和で安全な日本ですが、いまほど安全で平和ではない時代は、無事で帰ってくることすら願わずにはいられないそんな治世もあったかもしれません。
goodbyeには〈また会う約束〉がない
ここで、英語の挨拶と比べてみます。
「Have a nice day」も「Welcome back」も、とてもあたたかい言葉です。わたしも毎日使ってきました。
でも、そこには、文字どおり「楽しんでね」「おかえり」の意味しかありません。
日本語の挨拶にある「込められた思い」はないんです。
これからは日本語で声をかけようと思います
そこで、わたしは思ったんです。
英語には無い、この「いってらっしゃい」「ただいま」の意味を、海外のお客さまにも知ってもらいたい。言葉の成り立ちまで知った上で、日本語の美しさを感じてもらいたい。そして、覚えて使ってくれたら・・・こんなに嬉しいことはありません💕
だからこれからは、お客さまとの交流の中で、日本語での挨拶を使っていこうと思います。
出かけるときは「いってらっしゃい」。戻ってきたら「お帰りなさい」。
そして「行ってきます」「ただいま」と返してくれる日が来たら・・・想像するだけでわくわくします😊
まとめ
今回は、4つの挨拶をひとつずつ見てきました。
「行ってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「お帰りなさい」。言葉の形はぜんぜん違うのに、真ん中にあるものは同じでした。無事であること。そして、また会えること。
出かける人は「無事に帰ってきますね」と約束して、見送る人は「無事に帰ってきてね」と願う。帰ってきた人は「無事に帰りました」と知らせて、迎える人は「よくぞ無事に」と受け止める。毎日の何気ないやりとりが、実はぜんぶつながっていたんです✨
英語の「Have a nice day」「Welcome back」には、文字どおりの意味しかありません。どちらもあたたかい言葉ですが、日本語の挨拶のような思いまでは入っていないんですね。
わたしはこれまで、海外のお客さまには英語で声をかけるのがいちばん親切だと思っていました。でも今は、少し違うことを考えています。相手の言葉に合わせることだけが、おもてなしではないのかもしれない。日本語そのものを、お土産として持って帰ってもらう。そんな宿でありたいと思っています❣
わたうさぎのある鶴岡市は、出羽三山への玄関口です。羽黒山・月山・湯殿山をめぐる旅は、古くから「生まれかわりの旅」と呼ばれてきました。早朝に宿を出発されるお客さまには、これから「いってらっしゃい」とお声をかけます。そして山から戻られたら「お帰りなさい」。出羽三山を歩いてみたい方、古民家の宿でゆっくり過ごしたい方、ぜひわたうさぎへお越しください😊
わたうさぎの日々の様子は、インスタグラムでも発信しています。お客さまとの出会いや、庄内の四季の風景を、ぜひのぞいてみてくださいね✨
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