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ゲストハウス【わたうさぎ】:山形県鶴岡市の民泊
つるおかグルメ
うどんじゃないの? 庄内の夏麺「麦切り」の歴史と、讃岐・稲庭とのちがい

うどんじゃないの? 庄内の夏麺「麦切り」の歴史と、讃岐・稲庭とのちがい

目次

麦切り、と言うと、たいてい「うどん?」と返ってくる。ちがう。でも、説明するのが、ちょっと難しい。

わたしにとっては、夏になると食べたくなる、あたりまえの麺だ。冷たくしめて、つゆにつけて、つるっと食べる。庄内の人なら、たぶんみんなそう。

でも、あらためて「麦切りって何?」と聞かれると、うまく答えられなかった。似ているけど、うどんじゃない。そばでもない。気になって、すこし調べてみた。

麦切りって、なに?

麦切りは、庄内でだけ食べられている郷土麺らしい。小麦粉を塩水でこねて、細く切る。材料はうどんと同じ、小麦粉と塩と水だ。

ちがうのは、形と食べ方。うどんより細くて、断面が平たい。そして、冷たくしめて食べる。

お店だと、そばと麦切りを一枚の板に盛った「合盛り(あいもり)」が定番。薬味はわさびとねぎと生姜。からしを出す店もある。

「麦を切る」から、麦切り

名前は、見たまま。小麦の生地を、包丁で切る。だから麦切り。

おもしろいのは、そばと対になっていること。そばも、もとは「蕎麦切り」。そばを切ったから、蕎麦切り。麦を切ったから、麦切り。言われてみれば、そうだよね、という名前だ。

そばも、もともと麺だったわけじゃないらしい。長いあいだ、粒のまま食べたり、そばがきにして食べたりしていた。麺の形に切って食べた記録でいちばん古いのは、長野・木曽のお寺、定勝寺。1574年の古い帳面に「ソハキリ」と書かれているそうだ。切って食べる、という食べ方そのものに、けっこうな歴史があるんだなと思う。

歴史は、はっきりしない

調べてみて意外だったのは、麦切りそのものの始まりが、はっきりしていないこと。よく言われるのは、明治のころに庄内で生まれた、という話、鶴岡の大山あたりが発祥だ、という説もある。でも、どれも「諸説あり」で、はっきりとは決まっていないみたいだ。

言葉としての「麦切り」は、もっと古い。1643年の『料理物語』という料理本にも「切り麦」「麦切り」が出てくるそうだ。ただ、その時代の麦切りは大麦の粉でつくる麺だったという説もあって、いまの庄内の麦切り(小麦)とは別のものらしい。同じ名前でも、時代と場所でちがうものを指す。そこが、ちょっとおもしろい。

うどんとの、いちばん大きなちがい

庄内では、太くて断面が丸いものを「うどん」と呼ぶ。細くて平たいのが、麦切り。

でも、いちばんのちがいは、温度かもしれない。麦切りは、冷たくしめて食べるもの。同じような麺でも、温かくして出すと「うどん」と呼ぶお店が多い。庄内の人にとって、麦切りは夏のものなんだと思う。

稲庭うどん(秋田)とのちがい

おとなりの秋田には、稲庭うどんがある。見た目はちょっと似ている。でも、つくり方が全然ちがうらしい。

麦切りは「切る」麺。稲庭は「延ばす」麺。稲庭は、生地を手でねじって細く延ばしていく、手延べというつくり方。油は使わず、でんぷんをまぶすそうだ。だから表面がつるつるで、ちょっと透き通っている。基本は乾麺。

切る麦切りと、延ばす稲庭。同じ細い麺でも、たどってきた道がちがう。どちらかというと、稲庭はそうめんの仲間なんだそうだ。

讃岐うどん(香川)とのちがい

讃岐うどんは、太くてもちもち、強いコシで知られている。つくり方でいうと、讃岐は麦切りと同じ「切る」ほう。打って、切る。

ちがうのは、太さと、コシの感じ。讃岐のコシは、硬さじゃなくて弾力のことなんだそうだ。昔は「飲み込む」と言ったほど、のどごしの麺。水も塩もたっぷり入れて、長く寝かせて、あの弾力を出すらしい。

食べ方もいろいろ。かけ、ぶっかけ、釜揚げ、釜玉、生醤油。麺とだしの温度を組み合わせて頼んだりもするらしい。だしはいりこ。それにくらべると、麦切りはずっとシンプル。冷たくしめて、つゆにつける。それだけ。

ざっくり、ちがいを並べると

こうして並べてみると、麦切りは、讃岐ほど太くなくて、稲庭ほど繊細でもない。そのあいだくらい。なんだか庄内っぽいな、と思う。

鶴岡で、麦切りを食べるなら

家でも食べるけど、お店の手打ちはやっぱりちがう。鶴岡で食べるなら、この三軒。

寝覚屋半兵エ(馬町)

地元で「麦切りどこ?」と聞くと、まずこの名前が出てくる。開店前から行列ができて、県外ナンバーの車も多い。ここの麺切りはちょっと太めで、しっかり噛みごたえがある。そばとの合盛りが看板。クラゲで有名な加茂水族館とセットで行く人も多い。水曜休み、お昼だけ。 (最新の営業時間・定休日 → 食べログ)

麺処 鵬匠(日和田町)

鶴岡駅から歩いていける、住宅街のなかのお店。目印は店先の水車。そば・麦切り・ラーメンがぜんぶ自家製で、三色盛りなら一度に食べられる。つゆは海鮮だし。得盛りそばは500グラムで950円。お腹をすかせて行きたい。月曜休み。 (最新の営業時間・定休日 → 食べログ)

麺工房 無量庵(羽黒町川代)

羽黒山の麓にある麺工房。お参りの帰りに寄るのにちょうどいい。自家製粉の石臼挽きそばと、庄内小麦で打つ麦切りが看板。羽黒の清水を使うから、香りがいい。掘りごたつの個室もあって、家族連れでもゆっくりできる。水曜休み。 (メニュー・営業案内 → 無量庵 公式サイト)

どこも、街なかの便利な場所にはない。でも、それでいいんだと思う。麦切りは、わざわざ食べに行く麺だから。

ひとくちすすれば、たぶん分かる。うどんじゃない。これは、庄内の夏だ。

(営業時間や定休日は変わることがあるので、行く前に確認してね。)

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