日本海に注ぐ最上川の河口に開けた港町・酒田。
江戸時代には、大阪から北海道までを結んだ北前船(きたまえぶね)の寄港地としてにぎわい、堺に次ぐ「日本第二の港」と呼ばれるほど栄えました。
米や酒、染料になる紅花油——地域の物産がここから京都へと積み出され、その富が、豪商の館や名庭、美術館という形で今も町に残っています。
観光地を評価するミシュランの旅行版、『ミシュラン・グリーンガイド』は、そんな酒田にもいくつもの星をつけています。
★★★ … わざわざ訪れる価値がある
★★ … 近くまで来たら寄り道すべき
★ … 興味深い
うれしいことに、見どころはコンパクトにまとまっています。自転車を借りれば、半日でぐるりと回れる距離。本に載っていたスポットを、順に紹介します。
※星の格付けは、参照したミシュラン・グリーンガイド(英語版・東北〈北本州〉編)の該当ページにもとづきます。掲載内容は版によって変わることがあり、Web版などの「グリーンガイド・ジャポン」とは星数が異なる場合があります。
土門拳記念館 ★★ ― 水に浮かぶ、二つ星の建築
酒田が生んだ写真界の巨匠・土門拳(1909〜90)。リアリズム写真の大家である彼の全作品を収めるために建てられた、日本初の写真専門美術館が、二つ星(★★)の土門拳記念館です。
見どころは、写真だけではありません。建物そのものが作品です。人工池に浮かんでいるかのように設計したのは、建築家・谷口吉生。のちにニューヨーク近代美術館(MoMA)の改築を手がけ、世界にその名を知られることになる人物です。水面に映る静かな佇まいを眺めるだけでも、足を運ぶ価値があります。
アクセス(目安):酒田駅から「るんるんバス」約20分(¥100)、土門拳記念館停下車。開館9:00〜17:00、¥440(4〜11月は毎日、12〜3月は火〜日)。
公式サイト:土門拳記念館 https://www.domonken-kinenkan.jp/
※出典:同ガイド。最新は記念館公式で要確認。
本間旧本邸 ★★ ― 大名より豊かと言われた、豪商の館
「本間さまには及びもないが せめてなりたや殿様に」——。そう謡われた大豪商・本間家は、東北のたいていの大名より力を持ったとも言われます。その暮らしぶりを今に伝えるのが、二つ星(★★)の本間旧本邸です。
1768年に建てられたこの邸宅には、ひとつ変わった特徴があります。もともと、藩主が領内を巡視する際の宿所を兼ねて建てられたため、武士にふさわしい書院造の格式ある外観と、商人らしい優雅な内装が同居しているのです。部屋から部屋へ移るごとに、木材の質も、装飾も、そして床の高さまでもが変わっていく。徳川の世の身分制度が、そのまま建物の細部に刻まれています。
アクセス(目安):酒田駅から徒歩約20分、またはるんるんバス約7分・中町停下車。開館は3〜10月 9:30〜16:30、11〜2月 9:30〜16:00、¥800。
公式サイト:本間家旧本邸 http://hommake.sakura.ne.jp/
※出典:同ガイド。最新は公式で要確認。
本間美術館 ★ ― 日本初の私立美術館と、二つ星の庭
1947年、本間家が開いた日本初の私立美術館(★)。当初は酒井家ゆかりの品が中心でしたが、時とともにコレクションは広がり、いまは地域の文化を映す内容になっています。
ここでの主役は、むしろ庭かもしれません。回遊式庭園の鶴舞園(かくぶえん、★★)は、二つ星の美しさ。池、中島、築山、石、灯籠が過不足なく配され、歩くほどに景色が移り変わります。庭の奥に立つ清遠閣(★)は、かつて藩主の夏の別邸だった木造建築。1813年、鶴舞園と同時に築かれました。
館内には、陶芸家・池田氏の工房も。元館長・本間雄介が確立した技法にちなむ茶碗「本間焼」を作っており、一碗はきっかり600g——手に取ったときの重さが完璧になるよう仕上げられています。工房の見学は通常できませんが、本間焼はミュージアムショップで購入できます。旅の記念にひとつ、いかがでしょう。
アクセス(目安):酒田駅から徒歩約5分。開館は4〜10月 9:00〜17:00、11〜3月 9:00〜16:30(12〜2月は火・水休)、¥1,000。
公式サイト:本間美術館 https://www.homma-museum.or.jp/
※出典:同ガイド。最新は公式で要確認。
山居倉庫 ― 星はなくても、酒田を語るなら外せない
正直にお伝えすると、ガイド上で山居倉庫に星はついていません。それでも、酒田を語ってこの場所を飛ばすわけにはいきません。あえて紹介します。
1893年、米商人が建てた12棟の木造倉庫。新井田川のほとりに整然と並び、川側に植えられた大きなケヤキ並木が、夏の日差しと冬の寒風をやわらげ、米を最適な温度に保ってきました。ケヤキの緑越しに黒い倉庫の連なりを望む一枚は、酒田を代表する景色。星付きスポットの合間の、絶好の撮影ポイントです。
ひとつ、最新情報を。倉庫の一棟にあった庄内米歴史資料館は、2024年2月から当面のあいだ閉館しています(山居倉庫の管理が酒田市へ移行したため)。倉庫群やケヤキ並木の景観は今も楽しめますが、資料館の見学を目当てにする場合は、事前に現況を確認しておくと安心です。
アクセス(目安):酒田駅からるんるんバス約8分、山居東町停下車(徒歩なら約20分)。
公式サイト:山居倉庫(酒田市) https://www.city.sakata.lg.jp/bunka/bunkazai/bunkazaishisetsu/sankyosouko.html
※出典:同ガイド(一部、酒田市公式で最新化)。開館・閉館の最新情報は酒田市公式で要確認。
酒田市美術館 ★ ― 鳥海山を望む、丘の上の一館
1997年に開館した、丘の上に立つ酒田市美術館(★)。池原義郎による建築は、周囲の庭園、鳥海山、最上川、そして酒田の町並みと溶け合うような開放感が魅力です。窓の外の風景そのものが、展示の一部のよう。
主な収蔵は、酒田ゆかりの洋画家・森田茂と、彫刻家・高橋剛の作品。芸術と眺望の両方を、ゆったり楽しめます。
アクセス(目安):開館は4〜11月 9:00〜16:30、12〜3月 火〜日 9:00〜17:00、¥550。
公式サイト:酒田市美術館 https://www.sakata-art-museum.jp/
※出典:同ガイド。作家の生没年はガイドと美術館公式で記載に差があり要確認。最新は公式で。
食べる・遊ぶ ― 港町のもてなし
さかた海鮮市場
酒田港のそば、船場町に立つ市場。1階には新鮮な魚がずらりと並ぶ鮮魚店(8:00〜18:00・目安)、2階には港を見晴らしながら海鮮丼を味わえる食堂「海鮮どんや とびしま」(7:00〜19:00・目安)。港町らしい朝の活気を感じられます。
*公式サイト:さかた海鮮市場 https://www.kaisen-ichiba.net/
北前横丁(酒田柳小路屋台村 北前横丁)
酒田・中町の柳小路にある屋台村。2015年に生まれ、地酒居酒屋や炭火焼、ダイニングバーなど個性豊かな小さな店が軒を連ねます。北前船にちなんだ名も、港町らしくて粋。はしご酒にぴったりです。
*参考:酒田柳小路屋台村 北前横丁(酒田観光物産協会) https://sakata-kankou.com/spot/30646 / 各店の営業時間はまちまち。最新は上記や各店で要確認。
相馬楼(そうまろう)
酒田で最もよく知られた「江戸情緒の料亭」。国の登録文化財の建物で、酒田舞娘(まいこ)の演舞を鑑賞できます。舞娘御膳などの食事プランもあり、往時の港町の華やぎに触れられる特別な場所です。
*公式サイト:舞娘茶屋 相馬樓 https://www.somaro.net/ / 演舞の時間・料金・定休日(水曜など)は変わることがあります。予約を含め公式で要確認。
半日モデルコース(自転車がおすすめ)
美術・写真の館は駅の南西約5km(バスで約20分)ですが、それ以外の見どころは互いに近く、自転車で気持ちよく回れます。酒田駅では無料の貸出自転車もあります(10:00〜17:00・目安)。
半日プランの一例:本間美術館 → 相馬楼 → 本間旧本邸 → 山居倉庫 → 酒田駅へ戻る。土門拳記念館・酒田市美術館まで足を延ばすなら、バスを使って半日プラスみておくと安心です。
※貸出時間・条件は年で変わります。酒田駅の観光案内所で要確認。
おわりに
北前船が運んだ富が、二つ星の館や名庭、そして港町のもてなしとなって残る酒田。コンパクトに巡れるからこそ、一つひとつをゆっくり味わいたい町です。日帰りで駆け抜けるより、庄内に滞在して、鶴岡と合わせてのんびり巡るのがおすすめ。滞在の拠点は、ぜひゲストハウスわたうさぎで。
庄内めぐりの拠点に、ゲストハウスわたうさぎをぜひ。ご予約はこちら → https://wata-usagi.com/reservation/

