レストランに星をつける、あの赤い『ミシュランガイド』、ご存知ですよね。
実はミシュランには、旅行者のためのもう一冊があるのは知っていますか?
観光地を評価する『ミシュラン・グリーンガイド』です。豊かな自然や文化遺産を独自の基準で格付けするこのガイドが、山形県・鶴岡の見どころに、いくつもの星をつけています。
星の見方はシンプルです。
★★★ … わざわざ訪れる価値がある
★★ … 近くまで来たら寄り道すべき
★ … 興味深い
鶴岡には、東北でも数えるほどしかない三つ星の風景から、生きたまま仏になった僧の即身仏、東北屈指と評される名庭まで、星付きの見どころが集まっています。
この記事では、本に載っていたスポットを、ひとつずつ順に紹介します。
※星の格付けは、参照したミシュラン・グリーンガイド(英語版・東北〈北本州〉編)の該当ページにもとづきます。掲載内容は版によって変わることがあり、Web版などの「グリーンガイド・ジャポン」とは星数が異なる場合があります。
羽黒山 ★★ ― 鶴岡が誇る、三つ星の杉並木
鶴岡の見どころで最も高く評価されているのが、出羽三山のひとつ羽黒山です。山そのものが二つ星(★★)、そして山頂へと続く参道は、このガイドで最高評価の三つ星(★★★)に輝いています。
はじめにひとつ、正確にお伝えしておきます。
星がついているのは三山のうち羽黒山だけ。月山と湯殿山は、ガイドの解説には登場しますが、星付きスポットとしては立項されていません。つまり「出羽三山が二つ星」ではなく、あくまで「羽黒山が二つ星」です。(実際には月山も湯殿山もとっても見応えのある名所です)
さて、その参道へ。一歩足を踏み入れると、空気がひんやりと変わります。樹齢350〜500年の杉が両側にそびえ、2,446段の石段が山頂まで続きます。登り切るのにおよそ1時間。息は上がりますが、木漏れ日の差すこの道は、歩くこと自体がひとつの体験です。
途中に立つのが、国宝の五重塔(★★)。高さおよそ30m、五つの均整のとれた屋根を持つ、東北最古とされる塔です。周囲の杉のなかには、樹齢1,000年級と伝わる巨木「爺杉(じじすぎ)」も。塔と杉が織りなす一枚は、羽黒山を象徴する景色です。
山頂には、三山の神々を合わせ祀る三神合祭殿(★★)。萱葺きの厚い屋根を持つ堂で、神道と仏教が溶け合ったその姿は、明治の神仏分離を免れた貴重な建築とされます。すぐそばの宿坊斎館(★★)もまた星付き。精進料理と、山あいの静けさを味わえます(詳しくは後述)。
羽黒山は古くから、山伏(やまぶし)=修験者が修行を積んできた霊山でもあります。1,000年以上変わらぬ装束で山を歩き、法螺貝を吹き交わす——そんな信仰の世界への入り口が、この杉並木の参道です。
▶ 出羽三山の巡り方や信仰の背景は、当ブログの出羽三山シリーズでじっくり紹介しています。[内部リンク挿入予定]
アクセス(目安):鶴岡駅から庄内交通バスで羽黒山頂まで約50分(¥850)。ふもとから歩いて登るなら約1時間。
公式サイト:出羽三山神社 http://www.dewasanzan.jp/
※所要・運賃は季節で変わります。最新は庄内交通・出羽三山神社の公式でご確認ください。
注連寺 ★★ ― 生きたまま仏になった、二つ星の即身仏
羽黒山と並ぶ二つ星(★★)が、大網の山あいにひっそりと立つ注連寺(ちゅうれんじ)です。弘法大師ゆかりのこの寺には、即身仏(★★)——生きながらにして仏になった僧・鉄門海上人(1768〜1829)が安置されています。
即身仏になるための道のりは、想像を絶します。まず1,000日は木の実と種子だけ、次の1,000日は樹皮と松の根だけ。体の脂肪と水分を極限まで削ぎ落とす「木食(もくじき)」の行です。仕上げに、漆の木の樹液から作った茶を飲む。漆器の原料でもあるこの毒が、体を腐らせる虫を寄せつけず、遺体を保存したと伝えられます。最後は地下の室にこもり、竹の管一本で地上と息をつなぎながら、静かに入定していく——。死してなお朽ちなければ、その人は即身仏(日本に約20体)、生きながらに悟りに達した者となります。
堂を見上げると、1980年代に描かれた格天井(★)。屋根を火から守る護符として、現代の漫画のようなタッチで描かれているのが、不思議な取り合わせです。帰り際には、入口に吊るされた明治期の木製の鰐口(わにぐち、★)もお見逃しなく。「鰐の口」という名の通り、大きく口を開けた形をしています。
アクセス(目安):鶴岡駅からバス約40分(往復¥1,000)、大網バス停下車、北へ徒歩約25分。拝観8:00〜17:00、¥500。
公式サイト:湯殿山 注連寺 https://churenji.sansuirijuku.com/
※出典:同ガイド。拝観時間・料金は要確認。
致道博物館 ★ ― 移築建築と、東北屈指の名庭
鶴岡公園のかたわら、かつて鶴ヶ岡城が構えられ、酒井家がおさめた地に立つのが、致道博物館(★)です。1950年代、公園の所有者でもあった酒井家が創設しました。各地から移された歴史的な建物を、鶴岡の歴史と文化を伝えるミニ博物館として集めた、いわば“建築の野外博物館”。見どころのひとつずつに星がついています。
白眉は日本庭園(★★)。東北屈指と評される美しさで、隣には開口部が二つある珍しい茶室が寄り添います(一方は暗さを保つため。茶の湯に必要な、静かな集中を助ける工夫です)。この茶室は、書をしたためる作業部屋も兼ねていました。
旧渋谷家住宅(★)は、武士の兜のような形の茅葺屋根「兜造り」が特徴の、庄内の伝統的な農家。民具の蔵(★)は漁業をテーマにした民族資料館で、捕らえたサケの霊を慰める供養碑など、この土地ならではの展示が並びます。
敷地には、明治期の名建築も残ります。時計塔を頂く旧西田川郡役所(1881年、県内初の郡役所)と、旧鶴岡警察署(1884年、県内初の警察署)。文明開化の空気をまとった擬洋風建築が、庄内の近代を今に伝えています。
アクセス(目安):鶴岡駅からバス・タクシーで約10分。開館は3〜11月 9:00〜17:00、12〜2月 9:00〜16:30、¥800。
公式サイト:致道博物館 https://www.chido.jp/
※出典:同ガイド。最新は致道博物館公式で要確認。
食べる・味わう ― 星の町の、もう一つの楽しみ
星の景色を巡ったら、庄内の食もぜひ。滞在の拠点はゲストハウスわたうさぎ、そこから足を延ばして味わってください。
アル・ケッチァーノ
「食の都・庄内」を全国に知らしめた奥田政行シェフのイタリアン。地元の良質な食材を活かした、独創的な和伊折衷の料理が味わえます。下山添の一里塚にあり、鶴岡の食を語るなら外せない一軒です。
*火〜日 11:30〜14:00/18:00〜21:00(目安・要予約確認)。公式サイト:https://www.alchecciano.com/
羽黒山 斎館(参籠所)
羽黒山の中腹、300年の歴史を持つ参籠所・斎館では、月山の山菜やきのこを使った精進料理をいただけます(要予約)。参道歩きの締めに、この土地ならではの一膳を。
*予約・料金は出羽三山/斎館の公式で要確認。公式サイト:http://www.dewasanzan.jp/publics/index/64/
モデルコースと、鶴岡の余談
半日〜1日プランの一例:羽黒山(参道・五重塔)→ 昼食 → 致道博物館 →(時間があれば注連寺へ足を延ばす)。注連寺は市街から離れているので、じっくり回るなら一日みておくと安心です。
最後にひとつ、鶴岡の小話を。この町は、日本一おいしく、そして高価とも言われる枝豆「だだちゃ豆」の里。あまりの美味しさに、酒井家の殿様が家臣に毎日届けさせた——そんな伝説も残っています。星の景色を巡ったあとは、地元の味もぜひ。
おわりに
三つ星の杉並木、二つ星の即身仏と名刹、そして東北屈指の名庭。鶴岡は「わざわざ訪れる価値がある」とミシュランに認められた町です。見どころが少しずつ離れているからこそ、日帰りで駆け抜けるより、庄内に滞在して朝と夕の静かな時間まで味わうのがおすすめ。滞在の拠点は、ぜひゲストハウスわたうさぎで。
庄内めぐりの拠点に、ゲストハウスわたうさぎをぜひ。ご予約はこちら → https://wata-usagi.com/reservation/

